柚葉の父は泣きながら娘を抱きしめる。
「幸せになりなさい」
そう娘に語り掛ける。
耳が聞こえなくても、たとえ自分のことを思い出せなくても柚葉にはかならず伝わる。
そう思っている。

そして、大きな扉が開かれて柚葉と父は腕を組み一歩ずつ歩き始めた。

歩きながら柚葉は進む道の横に座る人を眺めた。

体育館で一緒にバスケットをしていた仲間。

中学時代や高校時代のアルバムで見た友達。

その先には永遠の両親や自分の母、永遠の妹がいる。