「柚葉、転ばないでね」
柚葉は夏子のに手を引かれて長い廊下を歩いていた。

夏子のことは思い出せないままの柚葉。それでも定期的に会い続けて夏子を覚えた。

夏子は柚葉の手を引きながら今までのことを思い出す。

長い廊下を歩ききるころには夏子の瞳からは涙が伝っていた。

廊下の先には柚葉の父が立っていた。
「お父さん」
柚葉の言葉に柚葉の父の表情が崩れる。
「今まで、ありがとう」
父との記憶も柚葉にはない。
永遠にお父さんと教えられて、父親と認識した。
あいさつの言葉も永遠と毎日練習していた。