「じゃぁ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい」
夏のある日、永遠は柚葉と出かける支度を済ませて柚葉の両親に挨拶をした。
玄関から出て、柚葉の体を支えて門までの階段を降りる。柚葉も永遠の腕に自分の手をまわしている。
そんなふたりの後ろ姿を見ながら柚葉の両親は高校生の頃の二人を思い出していた。
「大きくなったわね」
「あぁ。」
柚葉の母は父の腕に自分の腕を絡めた。
柚葉の母は瞳を潤ませながら娘の後ろ姿を見つめていた。

柚葉に脳腫瘍があるとわかった日から、こんな未来がくることなど想像もできなかった。

娘の未来にはこれからも困難が多い。それでも、一緒に歩んでくれる存在に支えられて、きっと大丈夫。前に進める。そう思っていた。