耳の聞こえない柚葉が口を読めるようにゆっくりと話しかける。
「高瀬永遠です。デートしませんか?」
そう言って手を差し出すと柚葉はその手に自分の手を重ねた。
それだけで柚葉の母が泣き出す。

自分から何かを選ぶのは手術以来、初めてだった。

「行こう」
永遠はゆっくりと柚葉を立たせて柚葉の母に
「行ってきます」
というと玄関を出た。
「行ってらっしゃい」
まるで高校生に二人が戻ったようで柚葉の母は涙をこらえられなかった。