私たちはまず、一番最初にホームに来た、家とは反対方面の電車に乗り込んだ。


毎朝なにげなく駅名を耳にするだけだった終点駅までは、30分ほど。


特急ではなく各駅停車に乗り込んだからか、電車の中はひどく空いている。


人の影に邪魔されることなく、長い車窓から見える久々の晴れ間をぼんやり見つめていると、

「はのんちゃんと逃避行してるなんて、信じられないな。逃避行って、小説の中の話だと思ってた」

シートの横に座るユキが、ほわっと苦笑するみたいに笑った。


力の抜けた、世の中の重力なんて感じさせないユキの笑顔を見ると、なんだか心が拠り所を見つけたみたいに安らぐ。

転校してきたばかりの頃は、あれほど癪に障ってイライラするだけだったのに。