……ああ、本当にはのんちゃんだ。
そう実感した途端、愛おしさの波が押し寄せてきて、俺は思わず感情のままに彼女の体を抱き寄せていた。
「……っ」
「会いたかった……」
噛みしめるようにかき抱き、そこでふと我にかえる。
「って、あれ? そういえば、どうしてはのんちゃんがここに?」
体を離して、混乱の眼差しではのんちゃんを見つめる。
今日は泊まりがけで隣町に行くと言っていたはずなのに。
すると、「今更?」と言いながらはのんちゃんが空気を揺らすように苦笑した。
「やっぱりあんたと一緒に花火見たいなと思って、ひとりで先に帰ってきたの」
はのんちゃんの言葉はすごく嬉しい。……だけど。
「花火、少し前に終わっちゃったみたいなんだ」
仕事終わりで疲れているだろうにせっかく帰ってきてくれた彼女をなるべく傷つけないよう、眉尻を下げてやんわり微笑む。
さっきまで豪勢に空を彩っていた花火の余韻はもう、暗い空の中に溶け込んで跡形もない。


