──どうしよう。今すぐ、会いたい。
そう思ったらもうそれしか考えることしかできなくなって、ほとんど衝動的にスマホと財布とコートとマフラーを手に取った俺は、部屋を駆け出していた。
外へ飛び出した瞬間、痛いくらいの冷たい空気の重みが体にのしかかってくる。
けれど、一瞬も躊躇うことはなかった。
はのんちゃんたちが出張出店する先の商店街の名前は、電話で聞いていた。
だけどこの時間にまだそこにいるかという確証はない。
今どこにいるかはのんちゃんに訊いても、きっとはのんちゃんは遠慮して居場所を言わないだろう。
でも、そんなのは問題じゃない。
どこにいたって探し出せばいいのだから。
俺を突き動かすのは、はのんちゃんに会いたいという気持ち、それだけ。
無鉄砲だとは、自分でもよく分かっている。
思えば、はのんちゃんに出会ってから無鉄砲なことばかりしているけれど、今自分にできることはなんだってやりたいのだ。
そう思えるのは、全部はのんちゃんのおかげ。
はのんちゃんに出会わなかったら、俺はきっと今頃――、
その先を噛みしめ、俺は踏み出す足に力を込めた。


