柾くんのところに行って帰る頃には、夜の18時を過ぎていた。


ちょうど花火大会の真っ盛りで、帰り道を歩く俺の頭上に、暗い夜空を彩る花火が広がる。


初めて見る花火は、音があることも相まってか想像していた以上に壮大ですごく綺麗だ。


だけど、やっぱり足りない。

綺麗だねとこの景色を分かち合う君が隣にいないから。


いつか見てみたいと思っていた花火なのに、なんだかじっくり見ている気にはなれなくて、賑やかな音を耳にしながらそうそうに家路に着いた。


自分の部屋に戻った俺は、やることもなくてベッドに横たわり、この前柾くんが貸してくれて読みかけだった小説を開く。


読書は好きだ。

いろいろな世界に俺を連れて行ってくれるから。


けれどいくら情景が描写されていても、やはり知識がなければ、頭に浮かぶ想像の範囲は広がらない。


スケートリンクってなんだ? と小さなひずみにつまずいたところで、いつもならスマホで検索をかけるけれど、今日は心が折れた。


読みかけの小説を、力なくベッドの上で手放す。


そして、蛍光灯の光を遮るように腕を目元に乗せた。

その手首に光るのは、はのんちゃんからもらったブレスレットだ。