はのんちゃんの家から帰る道に、伸びる影はひとつ。


その影を追うように歩きながら、俺は今日一日を思った。


今日は、〝お互い〟を教えてもらった日。

花火大会に行く約束をした日。


はのんちゃんはあたりまえのように、俺にたくさんの初めてをくれる。


……君はいったい、いくつ俺に宝物をくれるのだろう。

俺はいったい、どこまで君のことを好きになるのだろう。


「好きすぎて、ほんと、困るな」


口元に両手を当てて呟いたその声は、白い靄に形を変え、冷たい空気に溶けて消えた。