※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。



「花火、大会?」


中吊りを見てぽつりとこぼした声を、はのんちゃんが拾ってくれた。


「ああ、夏の花火大会が台風で延期になっちゃったから、今度やりなおすんだって」


開催地は、最寄り駅から歩いて数分の河原。

開催日は来週の土曜日。花火が上がるのは、夜18時から。

当日は多くの屋台も出店し、賑やかな花火大会になるといった事細かな情報が記されている。


「結構先の話だと思ってたけど、もう来週か~」


隣から、時の流れの早さに驚くようなはのんちゃんの声が聞こえてきた。


けれど俺の視線は中吊りの写真に縫い付けられたように、そこから逸らせなくなっていた。


鼓動が逸る。

電車の走行音が聞こえなくなる。


ああ、今俺は生きているのだと頭のどこかで場違いな実感をしながら、この電車の中で浮かないよう空気に溶かすみたいにさりげなく訊いた。


「はのんちゃん、一緒に行かない?」