はのんちゃんが俺を連れてきたのは、同じフロアにある何軒か前に立ち寄った男性向けの雑貨屋だった。
まるで目的が決まっているかのように、ショップの中をずんずん進んでいくはのんちゃん。
やがて突き当たりで立ち止まると手を離し、棚の上の硝子の小皿からあるものを手に取った。
そしてそれを俺の右手首に着ける。
「私からもプレゼントしたいんだけど、これでいい?」
「え?」
その存在を示すみたいに俺の手首できらりと輝いたそれは、シルバーのブレスレットだった。
「手首細くて白いから、こういうの似合うだろうなってさっき思ってたの」
「これ、俺に?」
「そうに決まってるでしょ」
そう言われても信じられず、ただただブレスレットを見つめてしまう。
だれかからプレゼントをもらうなんて初めてで、どんなリアクションをとったらいいのか分からない。
与えることはできても、なにかを受け取る側になることは、自分には縁のないものだと思っていたから。


