「いや、これは、えっと……ださ……」
助けに入っておきながら、こんなに震えていたなんて。
しかもそれを本人に気づかれるなんて。
自分のかっこ悪さに、髪を耳にかけながら思わず自嘲気味な笑みを滲ませると、頭上の彼が眉尻を下げて微笑んだ。
「かっこよかった、すごく」
「え……?」
すると、その時。
プシューっと音を立てて、すぐ近くにあったドアが開いた。
はっとしてそちらに目を向ければ、そこに広がるのは見慣れた景色。
私が降りる駅だ。
「えっと、じゃあ……っ!」
緊張を隠すように電車から飛び降りる。
彼がなにか言ったような気もしたけれど、それに気づく余裕なんてなかった。
はるくんという好きな人がいながら、こんなにドキドキしてしまうなんて。
私らしくない。
付き合ってきた男子なんて山ほどいてたくさん恋愛経験してるのに、笑顔を向けられただけでこんなにも動揺してる──。


