この頃の成人は数え年で15歳くらいだった。
一般的には成人の時に元服の儀式を行うが、秀頼は10年前に既に元服しているので、今回は盛大にお祝いする事にしたのだ。

今や数少ない豊臣恩顧の大名たちや馴染みの公家たちが集まった。
特に公家衆にとって豊臣家は希望である。
今回は親戚となった九条兼孝・幸家父子が駆け付けたほか鷹司家からは当主で先月から関白になった信房(のぶふさ)とその息子の信尚(のぶなお)も一緒にやって来た。
信尚は17歳で秀頼と年齢も近い分、すごく楽しみにしているような感じを受けた。
「これでようやく京にもお越しくだされますね!
共に朝廷で働けます事を嬉しく思いますぞ、右大臣様!」
「ありがとうございます、信尚殿」

「俺たちも命の限りお支えするぜ!」
そう言ったのは、豊臣家恩顧の大名・福島(ふくしま)正則(まさのり)だ。
「ようやく俺たちの出番が近づいてきた感じだよな」
「そうだな!」
嬉しそうに加藤清正(きよまさ)が賛同する。
「まぁ、焦らずやっていこうぜ」
寧々さんと親戚筋の浅野幸長(よしなが)は言った。

まずは順にお祝いの言葉などを述べ合い、新年にふさわしく能などを鑑賞した。
そして和歌を詠み合ったりしてその後宴が催された。
大人たちの酒が回り始めてきた夕方くらいで、千姫と松は多喜と一緒に退出させられた。
「私もまだ眠くないよ!?」
千姫は子ども扱いされてちょっと不満だった。
「ベロベロに酔った大人たちはロクでもないですから」
多喜はこそっと言った。
「ははは、確かに。僕も飲まされ過ぎないようにしなくっちゃ」
秀頼は苦笑して、千姫と松に手を振った。
「おやすみ。また明日ね」
「はーい、おやすみなさい」