それからの千姫たちは忙しい日々を送ることになった。
寧々さんはまた京都に帰って行ったので、その間の畑と田んぼは、料理長のヨシさん他、台所で働く女中達と小作人たちが交代で見守ってくれることになった。
と言っても手出しをすればタメにならないので、助けを求められない限り、極力姫たち自身でやらせることとなった。

早朝に田んぼと畑の手入れをした後に、秀頼と重成は大野治房や剣術指南の渡辺(ただす)などに協力してもらいながら治水や水路について学びを深めていった。

千姫はというと、秀頼が習った帝王学や兵法をざっくりと、そして算術を学ぶことになった。
けれど、基本的に淀殿や大蔵のおばば様には内緒なので本来の淑女教育は影武者を立てることになった。
寧々さんは千姫と松を見比べて満足そうに微笑んだ。
「変わり身の術はうまくやってるみたいね」
「はい!!」
あまり親しくない侍女や教師はもう二人の区別がつかないほどだ。
なので、松が千姫のフリをして淑女教育を受け、
千姫は松のフリをして用事を言いつかった体で別室に入り、寧々さんが用意した教師から個別指導を受けることになった。
座学が苦手な千姫にはちょっと苦痛だったが、和歌を詠んだりするよりかは全然楽しかった。