寧々さんはその日のうちに京都へ帰って行った。
侍女の孝蔵主(こうぞうす)こと孝(たか)さんがやれやれと言った表情で言った。
「ほだされましたね」
「…言わないで…」
「あれだけもう関わりたくないって言ってたくせに」
「うるさいわねぇ」
「本当に情が厚いんだから」
「…声がね…」
寧々さんは遠くを眺めた。
「そうですね、似てましたね…」
秀吉に、である。
「見た目も体格も全然違うのに、それでも似るところってやっぱりあるのね…。
正直、びっくりしたわ」

秀吉は身長も150ｃｍくらいしかない小柄で筋肉のつかないガリガリな体型で、「猿」とあだ名されるだけあって顔もしわくちゃなイケメンとは程遠い顔立ちだった。
しかしながら、中低音でよく通る心地良い声をしていた。
秀頼の父親に関しては色々な噂があったが、寧々さんは若かりし頃の秀吉を思い出す。