「全く、相変わらず自分の面白くないことが起こると癇癪起こして泣いて暴れれば何とかなると思ってるのね。
あの子供みたいなどうしょうもない性格は変わらないものかしらね」
「母が失礼をして申し訳ありません」
「まぁ予測はしてたけれどね。
徳川殿にはやんわりとお断りしておくわ」
「よろしくお願いします」
「でも、お千ちゃんも困るでしょ。
姑があんなに激しいと」
寧々さんは大人しく座っている千姫に話しかけた。
「で、でも、いつもはやさしくて良いおかあさまなんです!
たまにこわくなっちゃうけど。
おかあさまは、トラウマがあってかわいそうだからやさしくしてあげなくちゃいけないんです」
「二人とも母想いの優しいところは素敵だけど、将来のことをきちんと考えるのであればまずはあの母を説得できるようにならないといけないわね。
それは分かりますね?秀頼」
「はい…」
「トラウマって言ってもこの時代誰もがトラウマ抱えて生きてきてるのよ。
それを腫れ物に触るように甘やかすからいつまで経っても考え方が変わらないんだわ…。
困ったものね」
「だからこそ、寧々さま、あなたさまがお側にいては下さりませんか?」
治長の言葉に寧々さんは首を振る。
「今のあの娘を見たでしょう。
何言っても聞く耳も持たない…。
そんな側室の面倒まで私が見る筋合いも、もう無いでしょう。
私はしばらく来ないから好きにしてください」