秀頼くんが
私をまるで宝を見るように
愛おしそうに見つめる
優しく触れる
「好きだよ」
それは
今まで見たこともない雄の表情だった
いつのまにか
私たちは唇を重ねていた
初めて見る表情
初めて聞く息遣い
これだけ一緒にいたのに
知らないことだらけ
あなたを知りたい
もっと
もっと
力強い腕に身を任せる
心臓の鼓動が強くなる
暖かくて心地良くて愛おしくて
胸がいっぱいになる
幸せに押し潰されそう
愛してる
愛しいと思う気持ちが
どんどん湧いてきて
気が狂ってしまいそう
愛してる
知らなかった
愛し合う夫婦がこんな風に
身体を重ね合うなんて
誰も教えてくれなかった
彼の情熱が
私の身体にしっかりと刻み込まれる
愛してる
この男を離したくない
この男を誰にも渡したくない
私だけのものにしたい
愛してる
愛してる
愛してる
愛してるのに
幸せなのに
どうしてこんなに苦しいんだろう
本当は私のものなのに
私だけのものなのに
苦しくて
口惜しくて
たまらない
側室たちはこんなことしてたんだ…
私の男と…
私だけが知らなかった
正妻は私なのに
こんなに好きなのに
ここまで来るのに10年もかかった
どうして私は
もっと早く生まれなかったんだろう
もっと早く生まれてさえいれば
こんなに苦しまずに済んだ
嫉ましい
側室たちが
許せない
豊臣家を追い込んだ徳川家が
徳川家が豊臣家を敬う態度を取ってさえいれば
淀母さまだって追い込まれることがなかった
秀頼くんが急ぎ側室を囲う必要もなかった
許せない
この世の中が
どうして
私は
もう少し早く生まれなかったんだろう…
