鬢削ぎの儀が終わると、千姫と秀頼の2人の寝所が新しく設けられた。
2人はようやく夫婦としての第一歩を踏み出す。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ…」
2人は布団の上で少し離れた位置でそれぞれ正座している。
「緊張してるよね?」
「うん」
千姫は目を伏せる。
「僕も緊張する。
でも、2回目だね、一緒に寝るの」
「そうだね」
「覚える?
初めて大坂城に来た時の事」
「覚えてるよ。
あの時もすっごい緊張してたけど秀頼くん気を遣っていっぱいお話ししてくれて、遊んでくれて。
良い人だな、優しいな、ここに来て良かったなって思った」
「もう、あの時は僕も必死だったよ〜。
こんな小さな女の子、
泣いちゃったらどうしようとか
怖がらせちゃったらどうしようとか
嫌われちゃったらどうしようとか
ずーっとぐるぐる考えてた」
「うそー?
秀頼くん穏やかですっごい落ち着いてたじゃない!」
「そんなことないよ、ちょっとカッコつけてはいたけど」
「そうなんだ?」
「あの小さかった女の子がすっかり大人の女性だ。
いつのまにかキレイになって、
いつのまにか目が離せなくなって。
心が奪われてた…。
僕は君と結婚できて幸せ者だ」
千姫は秀頼の目を真っ直ぐに見つめる。
「私はね、実は一目惚れだったの。
結婚の儀の時に初めて見た時からずっと好きだった。
だから毎日すごく幸せだった。
秀頼くんが先に大人になっちゃって会えない日が続いた時はすっごい辛かったけど…」
「うん、ごめんね…。
辛い思いさせちゃって…。
でもあの時は君に救われたよ。
好きだって言ってくれて。
支えてくれるって言ってくれたから、
僕は立ち直れた気がする」
2人はこれまでの答え合わせをするかのように
思いの丈を語り合った。
「でも、悔しいなぁ」
「何が?」
「私ばっかり秀頼くんのこと好きで」
「そんなことないよ」
「だってさ、秀頼くんはいつも落ち着いててどーんと構えてて!」
「そんなことないって」
「…」
「君はどれだけ自分が魅力的で、どれだけ僕が我慢しているかわかってないんだ」
「…そうなの…?」
「そうだよ」
秀頼は千姫を引き寄せて抱きしめた。
「ずっとこうしたいと思ってた」
「秀頼くん…」
秀頼は千姫をぎゅっと抱きしめる。
心臓の音が聞こえる。
「お千ちゃん、怖い?」
「怖くないよ」
「…僕は怖いよ…。
沈みかけた船のような豊臣家に、
君を縛り付けといて良いのかって毎日思う。
でも
離したくない。
君の幸せを思えば思うほど
僕はどうして良いのかわからない。
情けないね。
ごめん」
「私は怖くないよ。
私は豊臣家と徳川家の懸け橋として秀頼くんに嫁いできたんだもん。
お世継ぎを作って両家を一つにしてみんなで幸せになるのが目標だもん!」
「ありがとう、お千ちゃん。でも…」
秀頼は少し言いにくそうに千姫に確認をした。
「ちなみに…床入りの作法というか…やり方というか…多喜からはなんて」
「なんかね、
”力を抜いて秀頼様に全てお任せすれば大丈夫”
って言われた!」
「そうか」
秀頼は可笑しそうに笑った。
「もう、何で笑うの?」
千姫は頬を膨らませる。
「ううん、そういうところも好きだよ」
2人はようやく夫婦としての第一歩を踏み出す。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ…」
2人は布団の上で少し離れた位置でそれぞれ正座している。
「緊張してるよね?」
「うん」
千姫は目を伏せる。
「僕も緊張する。
でも、2回目だね、一緒に寝るの」
「そうだね」
「覚える?
初めて大坂城に来た時の事」
「覚えてるよ。
あの時もすっごい緊張してたけど秀頼くん気を遣っていっぱいお話ししてくれて、遊んでくれて。
良い人だな、優しいな、ここに来て良かったなって思った」
「もう、あの時は僕も必死だったよ〜。
こんな小さな女の子、
泣いちゃったらどうしようとか
怖がらせちゃったらどうしようとか
嫌われちゃったらどうしようとか
ずーっとぐるぐる考えてた」
「うそー?
秀頼くん穏やかですっごい落ち着いてたじゃない!」
「そんなことないよ、ちょっとカッコつけてはいたけど」
「そうなんだ?」
「あの小さかった女の子がすっかり大人の女性だ。
いつのまにかキレイになって、
いつのまにか目が離せなくなって。
心が奪われてた…。
僕は君と結婚できて幸せ者だ」
千姫は秀頼の目を真っ直ぐに見つめる。
「私はね、実は一目惚れだったの。
結婚の儀の時に初めて見た時からずっと好きだった。
だから毎日すごく幸せだった。
秀頼くんが先に大人になっちゃって会えない日が続いた時はすっごい辛かったけど…」
「うん、ごめんね…。
辛い思いさせちゃって…。
でもあの時は君に救われたよ。
好きだって言ってくれて。
支えてくれるって言ってくれたから、
僕は立ち直れた気がする」
2人はこれまでの答え合わせをするかのように
思いの丈を語り合った。
「でも、悔しいなぁ」
「何が?」
「私ばっかり秀頼くんのこと好きで」
「そんなことないよ」
「だってさ、秀頼くんはいつも落ち着いててどーんと構えてて!」
「そんなことないって」
「…」
「君はどれだけ自分が魅力的で、どれだけ僕が我慢しているかわかってないんだ」
「…そうなの…?」
「そうだよ」
秀頼は千姫を引き寄せて抱きしめた。
「ずっとこうしたいと思ってた」
「秀頼くん…」
秀頼は千姫をぎゅっと抱きしめる。
心臓の音が聞こえる。
「お千ちゃん、怖い?」
「怖くないよ」
「…僕は怖いよ…。
沈みかけた船のような豊臣家に、
君を縛り付けといて良いのかって毎日思う。
でも
離したくない。
君の幸せを思えば思うほど
僕はどうして良いのかわからない。
情けないね。
ごめん」
「私は怖くないよ。
私は豊臣家と徳川家の懸け橋として秀頼くんに嫁いできたんだもん。
お世継ぎを作って両家を一つにしてみんなで幸せになるのが目標だもん!」
「ありがとう、お千ちゃん。でも…」
秀頼は少し言いにくそうに千姫に確認をした。
「ちなみに…床入りの作法というか…やり方というか…多喜からはなんて」
「なんかね、
”力を抜いて秀頼様に全てお任せすれば大丈夫”
って言われた!」
「そうか」
秀頼は可笑しそうに笑った。
「もう、何で笑うの?」
千姫は頬を膨らませる。
「ううん、そういうところも好きだよ」
