5月。
二条城会見の返礼品を持って徳川家の名代として、義直と頼宣がやって来た。
加藤清正と本多正純が付き添っている。
徳川家の2人の少年は大坂城の美しさに驚きを隠せなかった。
質実剛健な徳川の城に対し、大坂城は華やかに装飾され豪華絢爛なはずなのにギラギラとしたいやらしさはなく洗練された美しさを醸し出していた。
義直は今居城となる名古屋城を作ってもらってる最中だ。
しかし家康の性格や駿府城やら江戸城の様子を鑑みると規模は大きくインパクトはあるものの無骨でシンプルな作りになることは間違いない。
「ずるい。おれもこんな感じの城がいい…」
義直は呟いた。

風通しの良い城内も爽やかで何よりも女性が美しかった。
誰もが一城の姫のように着飾り、活き活きと働いている様子が印象的だった。
「なんかムカつく…」
頼宣も嫉妬心をのぞかせた。

謁見の間では秀頼と千姫が2人をもてなした。
「義直殿、頼宣殿!
ようこそいらっしゃいました」
千姫も年下の叔父たちを歓迎する。
「初めまして。
お二人の姪にあたります、千と申します」

千姫様のことは噂では聞いていたもののこれほどまでに美しいのか…!!
こんな美しい妻を持って
こんな美しい侍女たちに囲まれて…
こんな美しい城に住んで
こいつ、ずるい!
羨ましい!!
大坂城は男の数が極端に少ない異常な状態でもある。
しかしそれが義直や頼宣にはハーレムのような理想的な生活に見えた。

だいたい父上も父上だ。
何でおれたちがおちめのかく下相手にでむかなきゃならないんだよ
しかも何でおれたちが下座なんだよ!
こんなくつじょく、うけ入れてたまるか!
ぜったいゆるさないぞ…!

いろんな思いが渦巻く中、2人は「徳川家の名代」としてこの間の返礼品を秀頼に渡し責務を果たした。