花のようなる愛しいあなた

「豊臣家がまもなく到着いたします」
「そうか、そうか」
家康は秀頼を迎えるために玄関口まで出向いた。

宮廷を横目に通り過ぎなければならぬ気持ちはいかがだったかな?
この場所で昨日譲位式が執り行われた。
そして2週間後には即位式が行われる。
その場に豊臣の席はない。
あれだけ懇意にしていた公家衆の出迎えもない。
主上から招かれることもない。
爪弾きにされた気分はいかがなものか?
もはや政治への影響力も皆無であることは明白。
悔しいであろう?
虚しいであろう?
己の力の無さを実感するがいい!
徳川に平伏すしか豊臣の生き残る道はないと自覚するが良い!
さあ、その顔を見せろ…!

「ようこそ遠路はるばるお越しくださいました」
家康が豊臣家の従者たちに声をかける。
秀頼が駕籠から降りてくる。

え…?

「お祖父様!」
秀頼は笑顔で家康に挨拶をする。

誰…?
このイケメン…?

「お久しぶりでございます」

で、でか…!!!
え?
うそじゃろう…!!?
聞いてないんじゃけど!?

その身長差は約40cm。
家康は首が攣りそうなくらい見上げることとなった。
「え?秀頼…様?」

動揺した家康は「殿」と呼ぼうと思っていたのについ「様」付けで呼んでしまった。
秀頼と最後に会ったのは8年前の正月になる。
母君の後ろに隠れるように過ごしていた暗い表情をした子供が…。
まさかここまで大きくそしてここまで美丈夫に育つとは誰が予測できただろうか。

だって、あのサルとかハゲネズミとか呼ばれてた秀吉の子供じゃろう…!?
何でこんなに見目麗しいのじゃ!?
しかもこのでかさ!!!

家康の身長は当時の平均値よりも少し高い156〜157cmくらいであったが、秀吉の身長はそれよりも10cmくらい低い145cm程度だったと言われている。
やはり噂通り母君殿が不義を犯したのか…?
それだったらそれを理由に断罪する事もできようが…。

「はい、左様にございます。
お祖父様もお元気そうで…!
長年ご無沙汰だったことお詫び申し上げます。
またこうしてお会いできて嬉しく思います」
秀頼の声に家康はハッとする。

こんなに何もかも違うのに…似るところもあるものだ…。
そうまだ秀吉が若く純粋であったあの頃を思い出させる。
もう聞くこともないと思ったその声をまた聞くことになるとは…
色々ありはしたが、彼は良き友人でもあった…
不思議と懐かしい気持ちが溢れて来る。
間違いなくこの青年は秀吉の息子だ…。
「…なんとなんと…大きうなりましたなぁ…!!
爺も嬉しゅうございますぞ」