「いい加減にしろよ、いつまでそんな高飛車なことばかり言ってるんだ!!!」
秀頼が家康に8年ぶりに会うという報せを聞きつけて正月早々豊臣家の譜代大名達が続々と大坂城にやって来た。
激高しているのは福島正則である。
「何よ、そんなに怒らなくても良いじゃないっ!!」
淀殿は金切り声を上げる。
「どっちが偉いとか、先に挨拶しに来いとか!
今の世の中の状況を考えろよ!?
そんなプライド何の役にも立たねぇ!!
世の中的には
”徳川がこれだけ譲歩して歩み寄ってるのに、プライドの高い豊臣が壁を作ってる”
ようにしか見えてねぇんだよ!
これでまた徳川の誘いを無碍にしたら、豊臣の評判がどう落ちるかくらい、わかんねぇのかよ?」
「徳川の犬になり下がった負け犬のくせに!
よくそんな偉そうなことが言えたものね!!」
「うるせぇ!ヒステリーババア!!!」
「なっ…何ですって!!!?」
「豊臣家が弱腰だと世間から非難されても良いのかよ!?
口惜しくねぇのかよ!?」
「…」
「徳川殿と会って、今こそ立派になった秀頼さまのお姿を見せつけてやるんだ!
徳川を恐れてもいないし親密であることを世間に知らしめて世論を味方に付ける!
どうだ!!?」
「でもそんな相手の手中にわざわざ入り込むなんて…秀頼様に何かあったらどうするのよ!
殺されるかもしれないのよ…!?」

秀頼は静かに母を諭す。
「でも僕たちには福島殿や加藤殿や浅野殿や池田殿の頼もしいお味方がいる。
きっと道中僕を守ってくれるはずさ」
「そう!その通りだ!!」
「徳川殿だってさすがに公衆の面前で僕のことを殺したりなんてできないよ。
それに僕ももう10歳かそこらの子供じゃない。
母さんのおかげでこうして立派に育った」
秀頼は母の前に立った。
「どう?」
すくすくと成長した秀頼の身長は195cmを超え力強さと生命力に溢れている。
この頃の成人男性の平均身長は155cmくらいだったことを鑑みると本当によく成長したものである。
「そうね…こんなに立派になって…」
「ね?きちんと挨拶して来ようと思うよ」

「俺も一緒に行くから少し信用してくれ。
何かあったら徳川殿を斬ってでも秀頼様を守る」
「加藤殿…」
「よし、そうしたら当日の警備体制について作戦練るぞ!
兵も用意しないとな!」
加藤が中心になって計画を練り始める。
淀殿はしばらく黙って聞いていたが、一呼吸してから頭を下げた。
「皆様、どうかよろしくお願いいたします」