6月。
いよいよ大仏の着工式が豊国神社の同敷地内にある、かつて大仏が鎮座していた場所で執り行われる。
綿密な計画が立てられ、資材も職人も十分に揃えられた。
「では行って参ります」
「よろしく頼みます」
それに先立って片桐は大坂城を留守にした。
片桐は現場責任者としてしばらく京都と大坂を往復する生活が始まる。
計画は立てたが建築を進めるとやはりその場にいないとわからないことなどが多く発生する。
行程日程に合わせて京都所司代の板倉に報告することも義務付けられている。
板倉もこの徳川家と豊臣家の共同事業にはいたく協力的でプロジェクトは順調に進みはじめた。

京都の市民達もこの大型プロジェクトには興味津々だ。
「何やらものすごい大きさの大仏作るらしいぞ」
「秀吉公もすごかったけど、秀頼公も気前良いよな」
「この辺の建物全部寄贈してるもんなぁ…」

8月になると同敷地内にある豊国神社で秀吉の13回忌特別祭礼が執り行われた。
市民達が期待したような大盤振る舞いはなく粛々とした祭ではあったが、豊臣に対する期待は上がっていく。
「きっとあの大仏が出来上がった暁にはすごいことが起こるに違いない」
「もしかしたら次の17回忌の法要辺りじゃないか?」
「楽しみだなぁ」