花のようなる愛しいあなた

慶長14(1609)年、正月。

この歳は暮れから雪がしんしんと降り積もりすっかり白銀の世界へと変わっていた。
青白く輝く中庭で千姫と松は何となく佇んで夜が明けるのをぼーっと見ていた。
「正月といえば中庭にいるのがもう習慣づいちゃったね」
「そうですね」
秀頼は去年も来なかったし、もう羽根突きとかして遊んでいられる年齢でもない。
特に今年はこの雪だ。
けれど……。

「キレイね…」
「本当に」
手足が冷えて来た頃、部屋に戻ろうとすると秀頼と重成が現れた。

「秀頼くん…!」
「明けましておめでとう、お千ちゃん」
「お、おめでとう…。
どうして…」
「何となくここにいるような気がして。
やっぱり一年の一番最初にお千ちゃんの顔が見たいなと思って」
「…私も……」
秀頼は千姫の冷たくなった手をそっと握る。
「随分待たせてしまったみたいだ…ごめん」
「ううん、そんなこと…」

ゴホン、ゴホン!!
重成は咳払いをして見つめ合う2人をとりあえず正気に戻した。

「今年は秀頼さまが雪遊びしたいんだそうだ。
ですよね?」
「そう、そう。
寒い中動かないと凍えちゃうからね」
秀頼はにこやかに返事をしながら雪玉を重成にぶつけた。

「不意打ちとは卑怯なり!」
重成も秀頼に応戦して雪玉を投げつけた。
「秀頼くんに何てことを!」
千姫も雪玉を作って重成に投げる。
「姫さま、私、雪玉作りますからどんどん投げつけてやってください」
「ありがと、松!」
「いやいやちょっと待て!
この流れだと松は俺チームだろ!?」
重成は焦りながら松に抗議する。
「私は姫さまチーム!」
「あぁもう、そういえばそうだったよ、このメンバーだと俺が攻撃されるだけだった…!!」
重成は3人からの攻撃を交わしながらもうまいこと反撃してなかなかの良い勝負だった。
こんなに笑って楽しいのはいつぶりの事だろう。