「あの、京都の大仏の再建の話、進めちゃっても良いですかね?
片桐は恐る恐る秀頼に確認した。

ここ最近の豊臣家中は大変なことになっていた。
”秀頼が千姫に隠れて側女に子を産ませた”というショッキングな話は家臣たちにとっても他人事ではない。
もし、これを機に両家の関係が悪化して戦にでもなったら、家臣たちもその身の振り方を考えねばならない。
ところが家臣たちの心配をよそに、秀頼は今まで以上に千姫と仲睦まじく過ごすようになったし、側室たちも争いを好まずお互い仲良く過ごしているという。
千姫は、特に徳川家から共にやって来た家臣や侍女たちに秀頼の子供のことを口外することを固く禁じた。
豊臣家には不思議な和が生まれ、平穏な日々がまた戻ろうとしていた。

家康から大仏再建の提案を受けた片桐は、秀頼に話を持ち掛けるタイミングを計っていたのだが、ようやく家中が落ち着いて来たということで話を切り出したのだった。
「大仏か…
良いですね。
ぜひ話を進めてください」

秀頼は子を設けてから一回り人間が大きくなったようだ。
暗く落ち込みがちだった数か月前までと比べ、力強さと希望に溢れているようだった。
「大仏再建は亡き父の悲願。
僕が成長し父を超えたことを証明しよう。
今までに類を見ない立派な大仏を作ろうではないか」
「さすがは秀頼様!
そうおっしゃると思っておりました!」

ようやく豊臣家にも活路が見え始めた。