僕はあの日の夜のことを忘れようと政務や鍛錬に没頭した。
春になると母さんが歌会やら花見と称して、若い女性たちを招いたイベントを沢山開催するようになった。

招待客の女性たちは何だか皆異様な感じがした。
和やかな雰囲気の中にドロドロとした潰し合いのようなものを感じた。
仲良さそうに見せて隣の女性を貶める絶妙なトーク。
僕のことを品定めするかのように上から下まで舐め回すような視線。
上目遣いで媚びた態度。
甲高い笑い声。
やたらと多いボディタッチ。

気持ち悪い。
僕は愛想笑いをして時間が過ぎ去るのを待つ。



数日後、招待されていた女の1人が寝所の中にいた時には本当に驚いた。
「誰だ!?何をしている!!」
部屋の外にいた見張りの者と美也がすぐにやって来て不思議そうな口調で言う。
「いかが致しましたか?
何か不備がございましたでしょうか」

不備…?

あぁ、そういうことか
九条殿が言っていたことは…。

そうだよな、
これだけ警備の厳しい僕の部屋に女が勝手に入り込めるはずがない。

「あ、あぁ、すまない。
何の連絡もなくいきなりだったから少し驚いただけだ」
震えた女に優しく声をかける。
「大きな声を出してすまなかった。
怖がらせてしまったこと、許してくれるか?」
「は、はい…」

誰かもわからない用意された側室を抱く。
この(ひと)もそうしなければ立場的にまずいのだろうから…。
それからは毎日のように知らない女が用意された。