花のようなる愛しいあなた

燃え盛る炎。
迫りくる黒煙。
粉塵が舞って目が開けられない。
バキバキと激しい音を立て建物が崩れ落ちてくる。
逃げ惑う人々。
遠くから弾丸が撃ち込まれる音がする。
まるで地獄絵図のようだった。

私は数人のお付きの者たちと共に祖父を探していた。
「お願い、もうやめて!あの人を助けて!」

粉塵の煙の中から男たちの気配がする。
「誰かいるぞ!
「女だ!女どもがいるぞ!」
野獣のような男どもが舌なめずりをしながら私たちに近づいて来る。
「おお!上玉じゃねぇか!
良い服も着てるし、全部剥いで売ってしまえ!」
戦地では、こうして逃げていく者を狙った物盗りが横行していた。
「触るでない!
この方は徳川の姫君、千姫にあらせられるぞ!!」
護衛としてついて来てくれた大野の修理(しゅり)さまが叫ぶ。
「千姫様だと!?」
皆が私の羽織っている打掛を見る。
そこには葵の御紋が施され、徳川の者であることを証明していた。
男どもが動揺する。

その背後から武将らしき大男が現れた。
武将は狼藉者たちを薙ぎ倒し、膝をついた。
「もう安心でございます。
私めは坂崎(さかさき)直盛(なおもり)と申します!
姫様、さぁ、私が大御所様のもとへご案内します!」
「坂崎殿、感謝つかまつります。
私は大坂城家老の大野修理亮治長(はるなが)と申します!」
「さぁ、共に参りましょう」