「それより今度の日曜になったからな?
お寺の掃除。大変だと思うけどよろしく」

課長は、ニコッと微笑みながらそう言ってきた。
えっ?あ、忘れてた。
お寺の掃除があったのだったわ。
初めての課長のご自宅であるお寺に
訪問することになる。色々あったから忘れていた。
どうしよう。今さらながら緊張してきた。

「固くならずに気軽においで。
掃除とお昼が終わったら抹茶をご馳走するよ。
茶道とか気にせずに飲めばいい」

「は、はい。」

課長が点ててくれる抹茶か。
緊張するが楽しみだわ。
そう思いながら、うどんをすすった。

そして掃除する日曜日を迎える。
動きやすいようにTシャツとパンツスタイルにした。
地味だけど目的は、お寺の掃除だし
課長のお寺は、実家から20分ぐらいの距離にあった。
言った通りご近所さんだった。
かなり古いけど立派で大きなお寺だった。

「凄い…!!」

まともにお寺に来たのは、いつぶりだろうか?
覚えていないけど、多分幼い頃だろう。
それ以外は、嫌がって行かなかったし。
こんな事なら、もう少しお寺に来るべきだったわ。

「あ、おはよう。まどか
張り切って来てくれたみたいで助かるよ」

「おはようございます」

袈裟姿の課長が笑顔で出迎えてくれた
私は、地味な格好で恥ずかしいけど
喜んでくれるなら悪くない。
手入れされた広い庭園に入ると
当番の人達が集まっていた。
中には、知っているご近所さんも居るではないか。
いや、居て当たり前なんだけど…。

ここで会うと恥ずかしくなってきた。
すると隣近所の年配のおばさんが
私に気づいた。

「あら、長谷部さんとこのまどかちゃんじゃない!?
久しぶりねぇ~」

ギクッと肩が震える。
よりにもよって、お喋りなおばさんの方だ。
これは、まずいかも…。
私は、背中を向けたくなった。
 
「こんにちは…」