「みんな、緊張せずに思いっきり演じるんだぞ!」

「はいっ!」



時は瞬く間に過ぎ行き、ついに公演の初日がやって来た。
緊張するなと言われても、やっぱり緊張してしまう。
不安で足まで震える始末だ。



(頑張るのよ、カンナ!
絶対にうまくいくから!)



心の中で、自分自身に喝を入れた。
廊下の鏡に映るのは、いつもの私ではなく、16歳の町娘・エミリーの姿。



(そう…今から私はエミリー…町娘のエミリーよ!)



開演のブザーが鳴り響き、するすると幕が上がり、観客の拍手が響く。



「頑張れよ!」

監督が私の背中を叩いた。



「はいっ!」

返事と同時に、私は舞台に向かって駆け出した。