「アンジェラ…視察はもう止せ。
お腹の子になにかあったらどうする。」

「御心配には及びません。
私もお腹の子も至って元気ですゆえ…」

「過信してはならぬ。
良いか、出産までおとなしくしているのだ。」

「では、此度のカイセル行きが終わったら、おしまいにします。
それで良いでしょう?」

余は渋々、了承するしかなかった。
アンジェラはとても意志の強い女だ。
一度言い出したら、言うことを聞かないのだ。



アンジェラのお腹の子は、とても順調に育ってるらしい。
最初のうちはあまり目立たなかったが、最近はお腹も大きくなり、歩くのも大変そうだ。
それなのに、視察に出掛けるというのだから、まったく困った女だ。



ジョシュアの行方は、ようとして知れなかった。
しかし、奴を知る者はすべて抹殺した。
王妃について、おかしな噂が立つこともなかった。
ただ、ジョシュアが我が子の行く末を心配しないかと、余はそれを気にしていたのだが、王妃によると、ジョシュアは子が出来たと言った時も煩わしい顔をしただけで、喜んではいなかったという。
そうならば、子供にも関心はないだろう。
王妃の言う通り、もうあんな奴のことは、忘れても良いのかもしれない。



あと少しで、余は偉大な力を手にするのだ。
そうなったら、すぐにファーリンドへ攻め込み、まず最初にオルリアンを討つ。
今まで我がモルガーナの侵攻を食い止めて来たのは、あの憎きオルリアンなのだから。



(待っていろ、次こそ必ず、落としてみせる!)



余は胸に熱い炎が灯るのを感じた。