「カンナ、ありがとう。
とても良かったよ。
君には、とても不思議な才能があるんだな。
君の歌や踊りを見たら、いつも心が軽くなる。」

嬉しいよ。
ミュージカル女優の端くれの私にとって、それは最高の誉め言葉だ。



そうなんだよ。
きっと、私がこの道を選んだのは、たとえ一人でも、たとえその時だけでも、誰かの心を明るく出来たら…
ほんの少しでも支えになれたら…
そんな想いがあるからなんだね。



「ありがとうございます!
僕、いつでも踊りますから、歌いますから!」

私がそう言うと、アルバートさんは優しく微笑んで頷いてくれた。



あぁ、なんだかとっても幸せ。
歌ったり踊ったりしたら、いやなこともすっかり忘れてしまう。



私は、今、見知らぬ異世界にいて、元の世界に帰れるかどうかもわからなくて…
しかも、下手したらアルバートさんに殺されるかもしれないっていうのに、今、こんなにも幸せで…
まぁ、私が単純ってこともあるのかもしれないけれど、結局のところ、すべては演劇をやってたおかげだね。



(演劇をやっていて、本当に良かった…!)



演劇の神様に、私は、心からの感謝を送った。