「す、すみません。」

「気にするなって言ってるだろ。
それにしてもお前、えらく軽いな。
ちゃんと食べてるのか?」

「は、はい。」



恥ずかしい。
こんな年になって、おんぶしてもらっていることも、脅されただけで腰が抜けてしまったことも。
さらに言うと、この人、強いだけじゃなくてけっこう格好良いんですけど…
長い前髪に隠されてはいるけれど、かなりのイケメンだ。



「街道にはああいうごろつきが良く出て来ることを、知らなかったのか?」

「は、はい。僕、ファーリンドからの旅行者で…
ここらのことは、あまり知らなかったんです。」

「そうか。どこに行くつもりだったか知らないが、街道は馬車に乗った方が安全だ。
ファーリンドから何しに来たんだ?」

「え……えっと、観光?っていうか、ぼ、僕、船に乗ってみたくて、それで…」

なんだかすごく曖昧な答えだけど、大丈夫かな?
でも、咄嗟のことだから、うまい言い訳が思いつかなくて…



「そっか、おまえ、けっこうお金持ちなんだな。
あ、そういえば、名前を聞いてなかったな。」

「は、はい、僕はカンナと言います。」

「カンナ…聞いたことのない名前だな。
どこの出身なんだ?」

「え……えっと、それは……」



えっと、なんだっけ?
アルバートさんの国…確か、聞いたよ。



(……あ!)



「オルリアンです。」

私はようやく思い出した国名を返事にした。