「この野郎!」

別の男が殴り掛かって来た。
その拳を交わし、そいつの顔面に蹴りを入れた。
男は、顔を押さえてしゃがみこむ。

その後もごろつきたちは次々と俺を襲い、その度に、俺は奴らに攻撃を加えた。
最近の鬱々とした気持ちを発散するかのように、俺は、暴れまくった。
そのうち、俺に向かって来る奴もいなくなった。



「良いか?二度とそういうことはすんなよ。」

「へ、へい!」

ごろつきたちは、這う這うの体で逃げて行った。



「あ、ど、どうも…あり、ありがとうございました。」

余程怖かったと見え、若い男は涙をぽろぽろ零しながら、俺に向かって何度も頭を下げた。



「良いんだ。
最近、運動不足だったから、良い運動になったよ。
ちょっと拳は痛いけど。
じゃあな、このあたりは物騒だから、気を付けて帰れよ。」

「は、はい……」

男は一歩足を踏み出そうとして、その場にへなへなと腰をついた。



「おい、一体、どうしたんだ!?」

「こ、腰が抜けた…みたいです。」

「なんだって…!?」

男は、俺を見て、ぎこちなく笑った。