(……ん?)



少し先に、数人の男達がいるのが見えた。
近付くに連れ、なんとなくその場の状況のようなものがわかって来た。



若い男が、数人のごろつきに絡まれているのだ。
男は、まだ十代あたりか?
とても華奢な男だ。
カモにされるには、最適と言えるタイプだ。



(さて、どうするか……)



「だ、ダメなんです!
これは、僕のお金ではなく、知り合いの人からお預かりしている大切なお金ですから。」

気弱そうに見えるのに、男は、必死で抵抗していた。



「誰の金かなんて、俺達は気にしちゃいねぇ。
おまえはとにかく素直にその金を出せば良いのさ。
そうすれば、痛い目に遭わずに済む。」

「ぜ、絶対にダメです!」

こういうことは初めてなのか、男は、目に涙をいっぱい溜めて…だけど、必死に抵抗していた。



(……仕方ないな。)



「おい…聞こえなかったのか?
そいつは、おまえらに金を渡す気はないって言ってるんだ。」

「なんだ、てめぇは。
関係ない奴は引っ込んでろ!」

「見てしまったら、素通りってわけにもいかないだろ。
こう見えても、俺は正義感が強いんだ。」

言い終わると同時に、俺は、男の腹に重いパンチを打ち込んだ。