それにしても、今でも信じられない。
アンジェラが、本当に王妃になるなんて…
俺は、てっきりアンジェラの頭がいかれたんだと思っていた。
そうとでも考えないと、とてもじゃないけど信じられなかったからだ。



しかし、慌ただしく準備は整い、アンジェラが本当にこの国の王妃になるんだと知ったのは、婚礼の儀の前日だった。
ライアンからそのことを聞いた時は夢かと思い、思わず、自分の頬をつねった程だった。



その晩、アンジェラが俺の部屋にやって来た。



「アンジェラ…あんた、本当に王妃になるのか?」

「そうよ。言ったでしょ?
まさか、信じてなかったの?」

「で、でも…腹の子は……」

アンジェラはただおかしそうにくすくすと笑うだけだった。
そして、その日に城を抜け出すようにと、船券と路銀をくれて、手筈を俺に伝えたんだ。



当日になるまで、そんなにうまくいくとは思ってもみなかった。
だが、蓋を開けてみたら、嘘みたいに順調に進んで…



今、俺はこうして外にいる。
護衛も見張りも、俺の傍には誰一人としていない。



(最高の気分だ…!)



だが、浮かれてはいられない。
あと数日…この数日間はなんとしても、逃げ切らなくてはいけない!