「カンナ…顔が強張っているぞ。」

「え?そ、そうですか?」

「もっと、肩の力を抜いて……」

アルバートさんにぽんぽんと肩を叩かれ、私の緊張はさらに強まる。



高い天井には美しい小鳥の絵が描かれ、敷き詰められた絨毯は足を取られそうにふかふかしている。
調度品は凝った作りのものが多く、壁に貼られた大きな鏡が印象的だ。
まわりにいるのは、いかにもお金持ちそうな人達…
女性は、煌びやかなドレスを身にまとい、首や腕には、眩く輝く宝石を付けている。
日常とはかけ離れた雰囲気に、私はすっかり飲み込まれていた。



(すごいね…ここにいる人は、たいてい王族か貴族なんだよね。
もしかして、そうじゃないのは私だけじゃない!?)



そんなことを思うと、なんだか怖くなって来る。
私みたいな一般市民…場違いも甚だしいよね。
しかも、男装してることがバレたらどうしよう!?って。



あぁ、あんなこと言わなきゃ良かったよ。
お城の中ってどんな感じなんだろう?
王族の宴ってどんなんだろう?
そんなことをとりとめもなく話していたら、アルバートさんが、では、一緒に行こうって。
その時は、テンションが上がったけど、実際来てみると、なにもかもが思ってたよりもずっとすごくて、気後れしてしまう。