「トイレは?」

いつもお昼と夕方にそう訊かれる。私はゆっくりと手を挙げた。まあ、手錠をつけられているから両手が一緒に挙がるんだけどね……。

ドクンドクンと心臓がうるさい。いつもそうだ。この人たちを目にすると、自分が自由を奪われていると感じる。

私は鎖を外してもらっている間、瑠璃ちゃんを見つめていた。瑠璃ちゃんの目はどこか諦めたような表情で、見ていて私も辛い。

瑠璃ちゃんは、たくさん辛い思いをしてきた。家族から悪口を言われ、家を出なければならなかった。居場所がずっとなかった。友達の作り方がわからず、一人で生きていくしかなかった。

瑠璃ちゃんの過去は辛いことばかりなのに、未来でも苦しまないといけないの?そんなのあんまりだ。

私の腰につけられた鎖が外される。元彼氏の妹が私の腕を掴み、立ち上がらせる。いつもはそのままトイレへ行く。でも今回は違う。

だって……トイレへ行きたいというのは、脱出するための嘘だから!