土曜日夜。一日中泰晴と遊んで疲れて帰って来て一息ついたころ。何気なく携帯を見たらゆうきゅんからLIMEが来ていた。

【ケーキ食べましたか?いいなぁ。おいしかったですか。】

 時間を見ると14:34。うわ。全然気がつかなかった。急いで返信する。

【おいしかったよー!】

 ケーキの写真も一緒に送る。

 ♪~♪~♪~♪~♪~

「えっ?電話?」

 深呼吸を大きく2回して出た。電話初めてだ。

「も、もしもし?」
『こんばんは~?ゆうきゅんで~す』
「は、はい…」
『今日楽しかったみたいですね。』
「うん…たのしかったよ?」
『……』

 電話ごしだったけどゆうきゅんの空気が変わったのがわかった。

『そうですか。それで今日何したんですか。ケーキ食べただけ?』
「え~っと…映画見て、お好み焼き食べて、ケーキ食べて…」

 ちょっと緊張するけど、ぼつぼつ話し始めた。いつもより少し早い鼓動を感じながら。

「…それから…」
『それから?』
「本カフェに行ってまったりして、夜はパスタ…」
『も~一日コースじゃないですか。』
「うん。すごく楽しかったよ。」
『はあーーーー。辻先輩と一日コースかよ』
「あっ。文月くんも行きたかった…よね…?」
『えっ?』
「私たち泰晴大好き仲間なのに。全然気づかなかった!これだから私はダメなんだよね。今度は一緒に行こう。』

 泰晴の話なら結構話せる気がする。

『ちょ、ちょっと待ってください。何仲間って言いました?』
「泰晴大好き仲間だよね?」
『ぶっ。確かに辻先輩好きだし尊敬してますが、ゆめちゃんが思ってるのとは違う気がする…』
「そうなの?」

 前から思ってたけどゆめちゃん呼びが定着してない?なんかこそばゆいんだけど。

『俺、行くなら二人がいい。』

 ゆうきゅんのつぶやきにどきんと大きく鼓動がはねた。待って待って。

「泰晴と二人で?」
『…それわざと?』
「…誰と?」
『ゆめちゃんとに決まってるでしょ。』
「……」
『も~こんなにはっきり言わないとわからないんですか?』

 ゆうきゅんのすねた声が遠くで聞こえる。本当に電話でよかったと思った。こんな真っ赤な顔見せられない。

 ゆうきゅんはどういう意味で私と二人で行きたいって言ってくれてるんだろう。

 何かを期待するように胸がきゅっと甘く締めつけられる。

『ということで、抹茶カフェのイベントがあるんですけど明日行きません?』
「…抹茶カフェ?」
『和菓子と洋菓子のコラボがたくさん食べられる抹茶カフェがオープンしたばかりなんです。』

 おいしそう…行きたいけど、ゆうきゅんと二人きりか。緊張しすぎて楽しめない気がする。

『抹茶のムースとか抹茶ケーキ、抹茶の生チョコ、抹茶ぜんざいパフェ、抹茶チーズケーキ、抹茶…』
「行く!」

 頭の中が抹茶でいっぱいになった時、思わず返事してしまった。

『ふふっ。やった。ちなみにイベントに参加すると1時間食べ放題が半額になるんですよ。』
「おお。それはすごい。」
『だから明日は10時半に迎えに行きますね。いっぱい食べましょう。』
「…ありがとうございます。」
『それじゃあ、明日のために早く寝てくださいね~』
「うん。おやすみなさい。」
『おやすみなさい。』

 またゆうきゅんの言うとおりに約束してしまったのだった。