「おつかれ!」

 いつもの場所で待つ泰晴にブラックコーヒー缶を渡した。

「ははっ。俺も。」

 泰晴が私のお気に入りのミカンジュースをくれた。同じものが2個づつになった。

「あはは。気が合うね。」

「もう体調よさそうだな」
「うっ。その節はお世話になりました。」

 泰晴がほっとしたように私の頭をなでる。

「泰晴には迷惑ばっかりかけてるね。」
「ホントだよ。今度借りを返してもらわないと。何してもらおうかな。」

 先日の飲み会でべろんべろんに酔った私をずっと世話してくれた。翌日目が覚めたら枕元に水とビニール袋が置いてあった。それから朝にまた家に来てくれてうどんまで作ってくれた。二日酔いで重い体に染み渡るやさしい味だった。

「ホント泰晴がいてよかった。ありがとうね。」
「そうだぞ。俺に日々感謝しろ。」

 泰晴が太陽みたいに笑う。つられて私も笑う。私が大好きな泰晴の笑顔。

 本当に私はずるいと思う。たぶん泰晴が一番仲いい女の子は私だと思う。それがとても嬉しい。泰晴にこんなに依存して他に女の子と仲良くならないようにしている。いつか泰晴に大切な人ができたとき私は笑って祝福してあげられるのだろうか。逆はないから心配はないのになぁ。私には彼氏とか想像つかないと思った時なぜかゆうきゅんの顔が浮かんだ。思わずため息。

「ん?優芽?盛大に溜息ついてどうした?」
「あ…うん…ゆうきゅんが…」
「文月がどうした?」

 泰晴の顔が一瞬曇った。

「あ、ううん。何でもないよ」

 何かうまく言えない気がする。

「なんだよ~気になるだろ。何か悩んでることあれば俺に言えよ。俺たち友達だろ?」

 なぜか泰晴はすごく辛そうに笑う。

「泰晴?もちろん!大事な大事な友達様様です!」

 泰晴を笑顔にさせたくてちょっと冗談ぽく言った。

「はー。友達だよな。でも、今は話聞きたくないな…」

 泰晴がぼそっとつぶやく。

「え?何?たいせ…」
「よし!優芽が元気ならそれでいい!仕事もどるぞ。」
「う、うん…」

 話聞くとか聞かないとかどっちだよ。と一人でつっこむ。変な泰晴と思いながらドアを開く大きな背中を追いかけた。