エリート社員の一途な幼なじみと交際中!

幸いタクシー乗り場で待っている人は居なかった。二人で一番前に停まっているタクシーに近づくと、後部座席の扉が開いた。

環の合図で先に車内に乗り込むと、代わりに運転手さんが外へと出て行く。運転手さんがトランクを開ける音がして環が中にスーツケースを入れると、一言二言やり取りの会話が聞こえた後、二人は車内へ戻ってきた。

「それにしても暑いですね」

運転手さんは穏やかな声色のおじいさんだ。

「本当に暑いです。日本は湿気がある暑さでスーツは蒸れますね」

普段からほとんどタクシーに乗ることはなくて、密室状態に知らない人がいるのは少し緊張してしまうけれど、環と運転手さんの会話でその気持ちも和らいだ。

「どちらへ行かれますか?」

「高速に乗ってもらって、中野方面までお願いします」

「かしこまりました」

ゆっくりと車が動き出し、空港を背に走り出す。環は何も言わずに、膝の上においた私の左手を取った。