「辛くなったらいつでも言って」

セーラがそう微笑み、波瑠はゆっくりと頷く。そして、ヒンドゥー教寺院の観光を終え、次の場所へと向かった。

次に波瑠がセーラに案内されたのは、ビクトリア近郊にある植物園だ。ガーデン内には、南国の植物や花が咲き乱れている。

「波瑠、これはココ・デ・メールだよ」

セーラが指差す方には大きな椰子の木がある。そこには実がなっているものもあった。

「確か、セーシェルにしか生えない世界最大の椰子だっけ……」

無表情のまま波瑠が言うと、「知ってるの?」とセーラが驚く。波瑠は頷いた。

「幼い頃、テレビでセーシェルの海を見てここに来たくなった。もちろんあの頃は、感情がちゃんとあった」

「そっか……」

セーラは波瑠の手を握り、「ゾウガメにエサをあげに行こう!」と歩き出す。

大きなゾウガメたちは、エサを手にするとのそのそとセーラと波瑠に近づいてくる。はしゃぎながらゾウガメと触れ合うセーラを、波瑠は羨ましいと思いながら見つめた。