しばらく落ち込んでると

「海波、ちょっと入っていい?」

いつもより優しい声でしゃべるお母さん

「うん。」

「海波。春輝に全部話を聞いたわ。ねぇ海波。海波にとって海月くんは
どんな存在だった?」

そんなのお母さんだってよく知ってるくせに

「大好きで大切な人。」

そう言うとしばらく黙りこけるお母さん

「そうよね。この話は海波が大人になってから話をしようと思ってた
んだけど話すか。実はねこの家にはねもう1人、子供がいたのよ。
春輝のお姉ちゃんでね、沙織(さおり)と言ったわ。海波が生まれる
少し前に心臓の病気で亡くなってね。海波と海月くんの名前を考えたのも
沙織でね。病院の窓から見えた夜の海、月に照らされて音たてながら
さざめく波の音が沙織は大好きだったわ。」