「楓ー・・・・・・、もう頭ん中パンクしそうなんだけど」


「え?何言ってるの。まだ今日覚える分全部終わってないでしょ。ほら、ここまた間違えてるぞ」


「ひいいぃ・・・・・・」


光の雄叫びと楓のスパルタ教育の声を子守歌に、静かに目を閉じる。


もう少しで眠ってしまいそう、と思ったその矢先。


バンッ、と勢いよくドアが開いて、男の人が慌てた様子で入ってきた。


「く、紅雅さん、下に紫樂(しらく)とかいう奴らが突然やってきて・・・・・・!」


ただならぬ雰囲気に眠気が吹っ飛ぶ。


紅雅も、スパルタ教育中の楓も光も、何事だ、とその手を止めた。


「紫樂って、たしか隣町の族だよな」


「ああ、最近裏で何かやってるみたいだったけど、そんな族が何の用だろう」


紫樂。


私も少しだけ耳にしたことがある。


今隣町で一番大きい族だ。


売春してるとか、薬を売買してるとか、よくない噂は度々聞いていたけれど、ヨルとしての私とも暁ともなんの繋がりもない。


いい印象ではないが、表立って対立しているというわけでもない。


「とりあえず、下に降りようか」


楓の声と同時に、3人が立ち上がる。


「私も、行こうか?」


「・・・・・・いや、お前はここにいろ」


3人はそのまま呼びに来た男の人と部屋を出て行ってしまった。