「ほんとは流水で冷やすのが一番なんだけど。とりあえず、これで冷やしておいて」


私の背中には、冷たい氷水が入った氷嚢が当てられていた。


これ、いつの間に・・・・・・。


後ろを振り返ると、黒のTシャツ姿で明原が優しく笑っていて。


私と目が合うと、少し気恥ずかしそうに顔を背けた。


「前、止めときな。見えちゃいそうだから」


「へ!?あ、ありがと」


そうだ、私今脱いだ服で前隠してる状態だった・・・・・・。


明原が顔を背けている間に、シャツの前のボタンを留める。


しばらく沈黙のまま時間が流れた。


明原を盗み見ると、心配そうに私の背中を見ていて。


心配、かけてしまったんだろうか。


少し、申し訳なくなる。


「よし、まだ少し痛いだろうけど、こんなもんかな」


明原はそう言って氷嚢を私の背中から外した。


「あと、これ着ときな。俺のだけど。下、付けてないんだろ」


バサッと何か投げつけられ、手に取るとそれは大きいパーカー。


明原の言った言葉の意味を理解して、慌ててパーカーを羽織った。


そんな私を見て、明原は優しく笑う。


くそ、なんか、むかつく。


・・・・・・でも、助かったかも。


さっきまで痛かった背中は、まだ痛みは少し残るけどそれでもだいぶ楽。


「あ、ありがとうね」


顔を背けたままお礼を言うと、明原はニカッと笑ってみせた。


文化祭終了の、校内放送がかかる。


窓の外の空は、夕日で赤く染まっていて、怒濤の一日の終わりを告げていた。