翼は迷惑そうに顔をしかめているが、男達はお構いなし。


ついに翼がキレて、その場を去ろうとすると、その腕を男が掴んで引き戻した。


「無視しないでよー。まだ話は終わってないじゃん」


しつこい男達に、翼は耐えられなかったのだろう。


強引に手を振り払った。


その拍子に翼の爪が男の顔をかすめる。


男達はカッとなって怒鳴り始めた。


「おい、何すんだよ!」


「あんたたちがしつこいからでしょうが!こっちはあんたら相手してるほど暇じゃないんだよ!」


「んだとぉ!?調子乗ってんじゃねえぞ!」


売り言葉に買い言葉。


翼の態度にぶち切れたのか、男がテーブルの上のコーヒーをがっと掴んで、翼にぶちまけようとする。


「翼!」


無我夢中で翼の腕を引いて、覆い被さった。


バシャッと液体が飛び散る音と、コーヒーカップが割れる音が響いた。


背中が熱くて、じんじんする。


振り返ると予想外だったのか慌てる様子の男達。


教室中が、シン、と静まりかえった。


「・・・・・・お客様」


私の声に、男達がビクッと反応する。


男達は私と目が合った瞬間に、サーッ、と顔を青く染めた。


「今すぐに、お引き取りいただけますか」


「ひっ・・・・・・」


小さく悲鳴を上げた男達は、そそくさと教室から出て行った。