「ああ、そういえば、俺雫に言っておきたいことあったんだ」



「え?」



「いやー、別に今じゃなくてもいいんだろうけどさ、お前、未だに頼るの下手くそだし、ふらふらどっか行っちゃいそうだし、だったら言っといた方がいいかなって」



光の言わんとしていることが分からなくて戸惑う。



光はなぜか紅雅の方をチラリと見て、不敵に笑った。



「ほんとはちゃんと二人きりの時に言いたかったんだけど・・・・・・」



「な、なに・・・・・・?そんな改まって・・・・・・」



光はにっこりと笑って、私の頬に手を添える。



そのまま光の顔が近づいて、唇にそっと柔らかいものが触れた。




な、に・・・・・・?





何が、起こったの・・・・・・?






「俺、雫のこと本気で好きなんだよね」





「・・・・・・・・・・・・は?」





光はさっき私の唇に触れた自分のそれを、下で軽く舐めて、言った。














「雫。俺と付き合って」












光が私にキスをした瞬間、紅雅が椅子から立ち上がったのも。





楓が持っていたコーヒーカップを落としたのも。





光の声で、私の膝の上で寝ていた陽向が起きたのも。










その時の私は、全然視界になんて入ってこなくて。















“俺と付き合って”









「はあああああああああ!!!!!!?」










――――――――10月下旬。







もうすぐ、この街に冬がやってくる。