ヒロ兄は私の前にしゃがみ込んで、真っ正面から私を見た。



「本気で思ってんのか。自分が死ねばよかったなんて」



ヒロ兄のドスのきいた声は、お腹の奥に響いて肩がすくんだ。



「だ、だって、あの二人じゃなくて、私が死んでたら、陽向と三人で本当の家族で、幸せに、」



「ふざけんな!」



ヒロ兄の大声に、驚いて顔を上げる。


ヒロ兄の顔は酷く歪んでいて、その目は真っ直ぐに私を見ていて。


こんなに怒っているヒロ兄は、初めて見た。



「お前忘れたのか!お前が家に帰らなかったあの日、お前の両親が必死でお前を探し回ったことも!お前を大事な家族だって抱きしめてくれたことも!」


「っ、」



「陽向が生まれて、お前が名前を付けた日のことも!」



ヒロ兄が言葉にする度、その時の情景が、次々と溢れかえってくる。



私を探し回ってくれた、父と母の顔も。


大事な家族だと言ってくれた、優しい言葉も。


強く温かく抱きしめてくれた、あの腕も。


陽向が生まれて名前を付けて抱いたときの、あの温もりも。



四人で幸せに暮らしてた、家族だった時間が。