両親の腕の隙間から、ヒロ兄が見えた。


ヒロ兄は私に気づいて、Vサインで笑う。



そっか。


ちゃんと前を見れば、こんな景色が見えるんだ。



前を見て、手を伸ばせば、そこにはちゃんと、温かくて優しいものがあったんだ。







「・・・・・・で、ずっと、気になっていたんだが」


父が私を離して不思議そうな顔をしてヒロ兄を見る。


母も私の手をぎゅっと握って、ヒロ兄を見ていた。


「あ、ち、違うの。ヒロ兄は、」


「ヒロ兄?」


「あ、いや、えっと」


どうしよう。うまく説明できない。


「あー、すいません。俺、市原浩です。通りかかって偶然その子を見つけて、一人でいるのが気になったんで一緒に遊んでました」


ヒロ兄が私に代わって説明する。


「えっと、つまり、市原君が雫を誘拐した、とかそういうわけではないんだね?」


「ち、違う!ヒロ兄は、私が一人なの心配して、私に付き合ってくれてただけなの・・・・・・。ごめんなさい」


「そうか。市原君、疑ってすまない。娘と一緒にいてくれて、ありがとう」


事情を大体把握して落ち着いたのか、父がヒロ兄に笑いかける。


よかった、誤解されなくて。