「よかった・・・・・・!無事だった、」



「、え・・・・・・」



父親の伸びた手は、私を殴ることなく、私を引き寄せて抱きしめた。



「心配したんだぞ・・・・・・!お前に何かあったんじゃないかって、家帰ったらお母さんがまだ雫が帰ってないなんて言うから!事故とかに遭ってたらどうしようって・・・・・・!」



言葉が、うまく出なかった。



息を切らして私を迎えに来た父。


下を見れば、靴を履いてなくて。


白い靴下が、砂まみれだ。


スーツだって、よれよれで。


ずっと走り回っていたことが、よく分かる。



心底安心したような父の顔に、途端に涙が溢れた。


「ご、ごめ、なさいっ、ごめんなさい、」


しばらくして、お母さんもやってきて。


ああ、よかったと言って、また優しい腕で私を包み込む。



私は、本当にバカだ。


こんなに、両親が私を思ってくれていたと知らなかった。


夜一日いなくなったくらいで、二人して探しに来てくれるなんて思わなかった。


母なんて、もうすぐ生まれてくる子がお腹にいるのに、本当は、家で安静にしていなきゃいけないのに。


父だって、仕事の後で、すごく疲れているのに。



どうして、なんで、私は。



今までずっと、本当は怖かった。


信じられずにいた。


二人の優しさを。


二人の愛情を。


偽物だって、偽りだって、勝手に決めつけて。


怖がって、遠ざかろうとして、でもそれもできなくて。