男達は私たちの態度が気にくわなかったのか、表情が豹変して怒り始めた。


「いいから来いって言ってんだろ」


「女は大人しく男の言うこと聞いてろよ!」


逆上した男達が、乱暴に私と翼の腕を掴む。


ああ、食べ物持ってるのに、こぼしちゃう。


翼は両手に持ってるから、抵抗することも出来ず、ただただ睨むばかり。


もう、ほんとに面倒くさい。


一瞬だけ翼の腕を離して私の腕を掴む男の腹に手刀を埋め込ませる。


翼の腕を掴む男に蹴りを一発食らわせて、二人がうずくまっている間に翼の手を引いて逃げる。


「待てゴラアアア!!!」


鬼の形相で男達は追いかけてきたけど、後ろを振り返ったらきっと捕まる。


砂浜で、うまく足が動かない。


後ろで、翼がつまづいた。


やばい。


そう思ったとき、ふと目の前が暗くなった。


「やっと追いつい、た・・・・・・」


追いかけてきた男達の声が震えてる。


背中にまわされた腕が熱い。


「失せろ」


私を抱き寄せたそいつは、一言で男達を蹴散らしてしまった。


見上げると、呆れた瞳で見つめ返してくる。


「あ、ありが、」


「アホか」


間髪を入れずに飛んできた罵声と、頭に落ちてきたチョップ。


紅雅は不満顔で、私の手を取ってすたすた歩き始めた。


後ろを見れば、楓が翼に手を差し出して、立ち上がらせてる。


それにしても、なんでこの男はこんなに怒ってんの?


パラソルの下に潜り込んでから、隣に座る紅雅の顔をのぞき込むと、紅雅ははあー、とため息をついた。


「遠くに行くときは言え」


あ、そうか。


心配してくれてたんだ。


「ごめんね、ありがとう」


紅雅はその後ずっと無言だったけど、そんな紅雅の隣で食べる焼きそばはすごく美味しかった。