ちく、と小さな痛みが走る。


何やってっ・・・・・・!


ぎゅう、と目をつむったその直後、部屋のドアが開いた。


「紅雅、もう寝たの?」


紅雅の動きがピタリと止まる。


部屋へ入ろうとした楓もピタリと止まる。


待って、今の状況・・・・・・。


「うわあああああああ!」


紅雅を思いっきり蹴り飛ばして、床に落ちていたシャツをひっつかんでぽかんとしてる楓の横を一目散に走り抜ける。


幹部室へ駆け込んで、ドアを勢いよく閉めた。


ああ、もう最悪・・・・・・。


何私も流されちゃってんの!


紅雅といると、どうもペースを狂わされる。


初めてキスされたときだって・・・・・・。


い、いけない、だめだ、思い出すな。


隅にある私用に楓が用意してくれた布団をしいて、その中に勢いよく入る。


だめだ、気を許しちゃ。


私は、やるべきことがあるんだから。


ここだっていつか、私の居場所じゃなくなるんだから。


これ以上、心を許しちゃいけない。


頭まで布団をかぶって、早く寝ようと目を閉じる。


少しだけ胸の奥がずきりと痛んだのは、知らないふりをした。